未成年者のGID者をどうするのか問題
一般演題では
において詳細な報告あり。
プライバシーの問題があるので、
私の感想
のみ書く。
昔は未成年で周囲に受け入れられてたGID者なんて考えられなかったわけで、これについては、医療、教育現場、当事者グループともに、ほとんど未経験な問題である。まったく手探り状態に近い。
特に、教育現場サイドが問題を両親に対し丸投げしてしまう体質は問題だと思う。なんか、例の「いじめ問題」などでも見られる構造がこの問題でもあるのだろうか?
今後、性教育と思春期の第二次性徴をどうしていくかが問題だが、医療サイドには、手探り状態でもなんとか問題を乗り切っていこうとする意志は見えた。
第二次性徴を押さえる薬物(LHAアゴニスト)の使用については、未成年とはいえ2歳〜10歳まで、診療を続けており、本人が望むなら使用してよいのではないかというのが、主治医の判断らしい。
これについては、シンポジウムで、主に精神科医師より反論もある。
シンポジウム1「性同一性障害をめぐる諸問題」(司会 針間克己、東京武蔵野病院精神科)
- 法律上の諸問題(大島俊之、神戸学院大学法科大学院)
- 診断・治療の諸問題(阿部輝夫、あべメンタルクリニック)
- 外科的治療の諸問題(高松亜子、埼玉医科大学総合医療センター形成外科)
- 内分泌治療の諸問題(中塚幹也、岡山大学医学部保健学科)
- 小児思春期のGIDをめぐって(塚田攻、埼玉医科大学かわごえクリニック ジェンダークリニック)
おなじみの先生方の討論。ここでも小児期のGID者に対する医療の介入についての議論が闘わされる。
中塚先生が、思春期早期のホルモン療法による医学介入は、自殺念虜を緩和し、自傷、自殺、不登校などの問題の二次的な精神疾患の抑制につながると、積極的な意見。
それに対して塚田先生が、性成熟障害や自我違和性同性愛との鑑別が難しいし、通常の思春期においても、GID者にとっても第2次性徴との葛藤が、自己のアイデンティティの形成に重要な役割を果たしているので、第2次性徴への内分泌学的介入には慎重であるべきと注意を促す。
私見だが、この問題のポイントは鑑別診断の難しさというよりも、子供の自己決定権をどう考えるべきかという問題が根底にあると思う。
クライアントが成人なら、グリーン先生やダイアモンド先生のおっしゃるように、「性同一性障害は自分で診断し、治療できる唯一の疾患」と言いきっていい。
性の問題は、本人でないと判断できない微妙な問題が多々ある。性別を移行するかどうかの判断は、ある意味「患者に自己決定してもらうしかない」という側面もあるからだ。
精神科医師は、「本人の自己決定が正しいか」ではなく「本当に自己決定ができているか?」をポイントに判断すればいい。それで、たとえ手術して、後で後悔したとしても、それは本人がケツを拭いてくれるだろう。
しかし患者が未成年者の場合、当事者は法律的には「無能力者」、自活も難しいから、どうしても、保護者や学校、医師など、周囲の大人たちの価値観に意識的にも無意識的にもしたがわざるを得ない。また、判断できるだけの知識や経験が不足している可能性もある。形式的に自己決定権を認めても、本人の本心からの自己決定なのか、周囲の影響によるものなのかの判別は難しい。
だからといって、GIDの問題は、大人の側にも、実はこうしたほうがいい、ああしたほうがいいと指示できるほどの知見や経験があるわけでもない。基本的には、大人の側が、自己の判断の自信のなさも含め、本人に理解してもらったうえで、本人に判断してもらうしかないのだ。
そういう意味では、12歳からLHAアゴニストの使用許可、16歳よりホルモン療法というアメリカの基準には、それなりの見識があるとも思える。16歳を越せば、自分で働いて自活することも困難ではあってもできなくはないからだ。
問題は、その基準を「独立心」のアメリカでなく、「甘えの構造」の日本で……となると、う〜ん………難しいよね。
性同一性障害の子どもを持つ母親の体験
〜性同一性障害を受容することの意味〜
(白水美保、他、鹿児島大学医学部保健学科)
6、性転換を望む子どもからカミングアウトを受けた母親の語りなおしプロセス(荘島幸子、京都大学教育学研究科)
私の感想
これが、一昔前の状況だった。
子供がGIDだと父親がそっぽをむき、母親が自責の念でパニックになる。親も子供も状況を受容するまでに、かなりの葛藤と時間を経験する。
小学生のGIDなんて当事者にとってすら未経験な事態である。昔は、相談すらできず、なんとか周囲に合わせていくだけでも精一杯だったわけだから……。
ところで、解釈学的現象学的分析(IPA)???。なんかすごいテクニックを使っているみたいですけど……、面接のテープ興し、大変だろうなあ? 現象学をちょっとカジっただけのズボラな私には絶対に無理だ……(^^)