戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書 402) (新書)

計見 一雄 (著)

戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書)

戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書)

http://www.yomiuri.co.jp/book/paperback/20080107bk0c.htm

簡潔にまとめれば

精神科医の目か精神科医の目から見た戦争のメカニズム論。イラク戦争を題材に、米閣僚の心理的動向を、脳機能の仕組みから分析する。戦争の行動計画を策定する戦争遂行脳が結局、欲望と無関係に機能することはないと断じる。戦争と日常の臨床との切れ目があいまいである点を指摘し、知らぬ間に戦争に巻き込まれる恐怖を描く。」

ということになるのだろうけど、
著者は1935年生まれの戦中派でもあるため、話題は満州事変や日中戦争のころの大本営の偉いさんたちの心理状態にまで及び、それからイラク戦争を遂行したブッシュ政権の偉いさんたちのちょっとネジが外れまくった頭の中まで推測していただける。
さらに、アメリカの最新式の戦闘によるPTSDの治療法が、最前線の近くでちょっと休ませてから、戦場にすばやく戻すことであることを知ってブッ飛ぶ。
「うわキャッチ22だ! こわっ」と思うけど本当にそうらしい。
「あなたは病気ではありません。ただ疲れているだけです。十分に休息をとればまた戦えますよ」といかなんとか適当なことを言ってあげて、休息させてから、すばやく原隊に復帰させる。ずっと後方の病院のベッドなぞに収容たり、閑職をあたえたりすると、余計、病状が酷くなるそうな。

特に159p〜160pに書かれたアメリ海兵隊の訓練所の診療所で勤務していた女医さんの話が秀逸。ビーリー隊長みたいなゴツイ訓練教官が、二十代のの女医さんの前ですすり泣くわ、叫ぶわしている姿を想像すると笑えるんだが、なんかコワイ。しかも主訴が尋常じゃなく、面白コワい。

「新兵どもを殺したいんだ!」
お医者さんは少し相手に合わせて冗談めかして
「私たちは、みんな新兵を殺したいわよ」
「いや、違うんだ、俺は・新兵どもを・殺し・たい!」
そして、彼は頭をかかえて
「俺をイラクに戻してくれ!」
「俺はイラクでは何のトラブルもなかった、何の問題もなかったんだぁぁぁ」と叫ぶ

面白すぎる、すぎるけどコワい
でも、本人たちは、きっと真面目に苦悩しているんだろうなあ。

もう、あんたら、全員、アタマおかしい