GID特例法〜日本、韓国、トルコ法の比較〜、(伊東聡、FTM関門・北九州)

GID特例法〜日本、韓国、トルコ法の比較〜、(伊東聡、FTM関門・北九州)

まずは伊東君の発表の報告から……。

韓国の場合

大法院(日本でいう最高裁)の例示により、韓国のGID者の戸籍の性別変更について、日本の特例法よりも要件が厳しいものができ、とくに日本の特例法の「子なし要件」もついたという報告もあったが、厳密に言えばこれは正しくない。


ここらへんは、日本と韓国の違いが顕著で、法律がなければ何もできない日本の司法と違って、韓国の司法は日本よりも権限が大きい。条理裁判で判決が下せる。つまり民事では法律がない場合には、韓国の司法は、常識的な条理に基づき判断を下してよいという考え方がある。結果……

  1. 特例法などなくても、判事の裁量だけで既にGID者の戸籍の性別変更はすでに行われている(1995年)
  2. 問題は、判事によって裁量がまちまち(中には、ホルモン療法だけで変更してしまった例もあるようだ)だと、不公平で混乱が起きるので、ちゃんと基準を決めようということで、立法下の動きがある。
  3. 大法院の出した「例示」は、あくまで「例示」らしい。要件がかなり緩和された(子なし要件なし)民主労働党の法案も別にあり、現在、国会審議中であるとのこと。後は結果待ちらしい。


トルコの場合

子供のいる当事者の扱いについても、明記してある。趣旨は、子供のいるGID者が性転換して戸籍を変更する場合、子供の親権はなくなるかわりに養育費を払うべしということらしい。


つまり、イスラム教国の民法のベースは、家父長制だけど、父親が性転換して女性になった場合、父親として子供を扶養、養育、監護することは不可能になる。
そのかわりに、子供や妻のため、生活に困らないようお金はわたしてやれということらしい……。

う〜む。家父長制なら、家父長制なりに、きちんとスジを通して、最後はお金でかたをつけてしまうあたり、イスラム社会らしいというか……これはこれでありかも。


トルコのケースは、案外日本の特例法の見直しを時には、一つの参考になるのではということだった。

私の感想

日本の民法の場合、伝統的な家制度と大陸法諸国と英米法諸国の家族制度のあいまいなミックスだから、保守も革新も、どこかでスジの通し方がわからなくなってしまうんだろうな。