ホルモン療法による副作用の問題
気になる副作用は以下のとおり、
深部静脈血栓症(MTF)、動脈硬化(FTM)、男性型脱毛症(FTM)、骨粗鬆症(FTM)など
男性型脱毛症について
特別講演
男性型脱毛症の原因と治療 (棗田豊・横浜市立大学医学部客員教授)
ようするに、ハゲです。
アンドロゲンを使っているFTMの人だけじゃなく、身体のメインフレームが男性のMTFも、通常の男性であってもしごく気になるテーマ。
メモした知識を少し。
トリビアの泉でも有名になったこのトリビアから
「かの有名なギリシアの哲学者、アリストテレスは『スケベな男はハゲる…』と唱えていた」72へえ
紀元前4世紀〜5世紀、ヒポクラテスやアリストテレスは宦官がAGA(Androgenetic Alopecia 男性型脱毛症)にならないことや、性交を始める年頃になる前にAGAは発祥しないことを喝破しており、AGAは生殖機能と関連づけられて考えられてきた。
1942年 J.B.Hamiltonの研究によると
AGAの原因はテストステロン(男性ホルモン)
AGAの素因は遺伝する。(ハゲの家系がある)しかしこれはテストステロンの生産量より、毛曩のホルモン感受性が遺伝して影響しているらしい。
16歳以下で去勢した人はAGAは発症しない。20歳以降に去勢したMTFは危ないかも?
附則トリビア
ちなみに頭髪が薄くなってニューハーフを廃業することを「ハゲ落ち者」と呼ぶ隠語が昔はあったらしい(私記)……(^^)。
その後の研究で
原因はテストステロンというよりも、5α-還元酵素によってテストステロンが変換してできるジヒドロテストステロンが直接の原因らしい。
胎生期には
テストステロンが脳や内性器、ジヒドロテストステロンが外性器の男性化をうながす。成長後は
テストステロンが筋肉や骨格、ジヒドロテストステロンが髭の発現、AGA、前立腺の肥大などを引き起こす。これは男性で5α-還元酵素Ⅱが欠損している場合、胎生期に男性外性器が発達せず。女児と間違われて育てられ、思春期を迎えて、声変わりや、筋肉質化、陰茎の成長、
射精、女性への性欲などが現れて男性と認識される症状があり、その方たちの研究によって明らかになった。ほぼ完全に男性化するが、髭は生えず、決してAGAや前立腺肥大にはならない。その研究から5α-還元酵素を特異的に阻害するファナステリド(商品名プロペシア)という薬品が、前立腺肥大の治療薬として開発され、最近ではAGAの治療薬としても使われている。
効果はそれなりにあるようなので、ハゲでお悩みの方はぜひどうぞ。
附則トリビア
ちなみに「オランダの有名なミニペニス形成の先生は『Hage』先生」(高松亜子、埼玉医科大学総合医療センター形成外科)いや、直接は関係ないんだけど……(^^)。
骨粗症について
シンポジウム2
「骨をめぐる諸問題」(司会 永井敦、川崎医科大学泌尿器科)
- 動物モデルとしての卵巣摘出術による骨粗鬆症の病態解明とその治療(菰田二一、埼玉医科大学生化学、宮崎孝、埼玉医科大学衛生学)
- 歯周病と全身疾患との関わりについて(山本松男、昭和大学歯学部歯周病学)
- GIDと骨粗鬆症について(宮島剛、埼玉医科大学整形外科)
以下、知識を……。
骨は、破骨細胞という細胞が組織を破壊し、骨芽細胞という細胞が組織を作り出す
というサイクルで代謝している。
道路を整備するのに、破骨細胞が古くなってでこぼこになったアスファルトをはつり、骨芽細胞がアスファルトを新しく舗装しなおしていくようなもの。その作業を身体のあちこちで4ヶ月かけて行ない。作られた骨組織は40ヶ月持つらしい。エストロゲン(女性ホルモン)は破骨細胞の働きを抑制する作用がある。
ところが女性が閉経を迎えるとエストロゲンが不足するため、破骨細胞の抑制がなくなり、どんどん骨密度が減少し、骨の強度が低下する。これが骨粗鬆症である。FTMは、ホルモン療法、卵巣の摘出など、人工的に閉経状態を作り出しているため、20代、30代から骨粗鬆症を発症した事例がある。(調べてみたら、かなり深刻だった)
この病気は、骨折を起こすまで自覚症状がないため、病の進行に気が付いた時には、手遅れの可能性もある。40代で脊椎損傷で車椅子とか……。
FTMの方は、主治医と相談して、できるだけ早期に、定期的にちゃんとした病院で骨密度検査をうけることをお勧めするとのこと。治療薬としては、エストロゲン、SELM、ビスフォスフォネートがある。
エストロゲン、SELMは女性ホルモンとその誘導体なので、FTMが使用するならビスフォスフォネートが適切であろう。骨密度の回復には時間がかかる(「医師の上にも三年」という宮島先生のオヤジギャグのオマケつき)ので、できるだけ早い時期での対応が望ましい。